成人年齢の引き下げ

  成人年齢が18歳に引き下げられるということはかなり前から報道されていましたが、ようやく国会で審議が始まっています。2022年4月の施行を目指しているとのことです。

   諸外国も成人年齢を18歳としているところは多く、また高校を卒業して働く人もそれなりに多いため、18歳へ成人年齢を引き下げるという措置は十分あり得る話だと思います。そもそもなんで20歳だったの?というのもあるし、それを言えば、今度は「なぜ18歳?」というのもあるかと思います。要は、成人年齢って何を基準に決めるのか、というところでしょうか。


   一方で選挙権。こちらは一足早く18歳から選挙権が与えられるようになりましたが、このことが表しているとおり、成人年齢と選挙権は一致させる必要はないということです。国会(及び内閣)による立法及び政策の結果は全国民に及ぶ訳ですから、未成年だからといって選挙権がなくてよいということにはなりません。そうすると、選挙権が与えられる年齢はもっと引き下げてもよいのではないかと思います。
  つい最近まで20歳未満には選挙権がありませんでしたが、これは、おそらく、まだ未成熟な若年者は選挙で誰に投票すべきかという判断能力がないから、ということが理由だったのだと思われます。しかしこれは教育ないし啓蒙の問題ではないかと思います。個人個人の問題を論じても意味はないのですが、30代でも50代でも、そして70・80代でも、判断能力に欠ける大人は中にはたくさんいるわけです。個人的には、16歳くらいであれば選挙権を与えていいと思います。


  さて、18歳から成人ということになると、法的には、18歳になれば、親権者の同意も必要なく、各種の契約ができたりします。たとえば、証券会社に口座を開設して株や投資信託に投資するとか、仮想通貨を売買したりできます。さらには、高額なエステのサービスなども分割払いで契約することができるということになります。
   そうすると想定されるのは、18歳~19歳を対象としたキャッチセールスや訪問販売、その他強引な手法による販売で、高額商品を分割払いで購入させるという商法が、成人年齢引下げの施行後、増えるだろうということ。特に大学進学のために地方から上京してきたばかりのあか抜けない若者などは狙い目でしょうね。同居の家族もいないため、8日間のクーリングオフ期間内に解約されないことも十分あり得ます。これが20歳を過ぎていれば、(現役で大学に入っていれば)大学3年~4年なので都会での生活にも慣れ、そういった勧誘販売にもひっかからない人間が増えてくるのでしょうが。消費者庁は、このあたりの対策は進めているのでしょうか。


   かくいう私も、すでに30歳も過ぎていたのではないかと思いますが(笑)、渋谷で絵画のキャッチセールスに遭いました。ラッセンなどの絵画が100万円程で売られていて、これを割賦で買わないかというものです。路上で女の子に声をかけられ、公園通りのディズニーストア近くにある展示会場?に連れていかれ、30分~40分、購入を勧められました。店員さんも苦労してつらかった時代に分割で買った、そして毎日その絵を見て活力が湧き、その後運気が上がってきて物事がうまくいった、といった勧誘文句だったと思います。勿論買いませんでしたが、買いそうな雰囲気というか弱気そうに見えたんでしょうね。

株式市場の急落

世界同時株安が続いています。しかし今年に入って一度は24,000円を超えた日経平均が、この1週間程度で急落し、昨日の終値は21,610円。前日(5日)の終値より1日で1071円も下げています。
まあ、一時的な調整だと思います。すでに本日は反発し9時半の時点で22,250円まで戻しているようです(その後確認すると、終値は21,645円で、前日比35円高)。

 

メディアの報道などによれば、アメリカでの金利上昇を受けて、債券と比べて株の割高感が意識され株式の売りが膨らんだとのこと。この表現だけだとよくわからないのですが、要は、市場の参加者は皆、それまでの株式相場は実力以上の相場で投資しても利回りは低そうだと認識しながら、他に投資するところがないためやむなく投資していたところ、アメリカでの長期金利の上昇を受けて債券相場が下落し投資対象として認識されたために株式市場の魅力が相対的に薄れ、売りが相次いだ、ということでしょうか。

 

報道によれば、この動きにさらに拍車をかけたのが、コンピューターによる自動取引とのこと。つまり値動きが激しいと、コンピューターが自動的にリスクの度合いが高まったと判断し、機械的に売り注文を出す。そうするとさらに相場が下がり、コンピューターがさらなる売り注文を出すという悪循環。さらに報道によれば、この自動取引の売りに短期取引のヘッジファンドが追随して売りを出し相場の下落が加速したとのことです。

 

投資のことは詳しいわけではありませんが、この報道を見て思ったことが、よくも悪くも、世の中はどんどんイージーな方向に流れていっているということ(この言葉遣いこそ、イージーな言葉づかいですね。安易な方向に流れていっていると言えばいいのでしょうか)。

イージーな方向、とはどういうことかというと、2点あります。

 

1つ目は、判断の機械化(もっと言えば、判断を機械そのものに委ねること)です。
世の中の多くの投資家は、中長期的に見て相場が安定的に上がっていくことを望んでいるはずです。そうすると、相場の加速的下落・循環的下落につながるような機械的判断にゆだねるのではなく、こういった値動きの大きい局面だからこそ、その局面が一時的なものか中長期的なものかを具体的状況に応じて個別に判断してアクションを決めるというのが(少なくとも現在の状況においては)よいのではないかと思います。(中長期の投資家がコンピューターによる自動取引を導入していることを前提に書いています。)
先に書いた通り、投資についてはそこまで詳しいわけではないので(現在勉強中です)、まったく的外れな意見かもしれません。また、一定の判断を機械に委ねるということ(より厳密には、設定という形で予めの判断を人間が行っておいて、機械はその判断に基づいて自動的に実行する)自体は、ありだと思います。問題はその予めの判断の内容というところでしょうか。

 

2点目は、政治のポピュリズム化同じように、今の社会は、皆がやっていれば自分もそうすべきだと思ってしまう、全体の風潮に安易に流されてしまうという傾向が強いということです。先ほどの自動取引も、相場の騰落率が%を超えたら自動的に売る、買う、そういう設定とのことですが(もしかしたらもっと複雑な設定がなされているのかもしれませんが)、そこには自身の独自の分析に基づく市場の読みがこうだから売るべき買うべきという判断はないのだと思います。簡単に言ってしまえば、皆が売るから売るという、流れに遅れるな的な発想というか行動。メディアや書籍も、そのような安易風潮を煽るようなものが多いのが気になります。

以上、浅学ながら、今回の市場急落報道を見て自分なりに感じたこと考えたことを記しました。

フェアな世の中にしたい

フェアな世の中に

今般、ブログ名を変えました。今までは、知人に頂いた日本酒の銘柄名(福寿)にちなんだブログにしていたのですが、それでは何をテーマにするブログか分からないため、ブログ名を変更することにしました。

 

このブログで伝えたいこと
今、世の中はどんどん変わっていっています。90年代後半にWindows95が発売され、インターネットが普及し始めた頃は、ネット上の情報もそれほど多くなく、また、こういったデバイスを使った通信手段はメールでした。それが20年程の間に、誰もが情報の発信者となり、ネットという仮想空間に情報はあふれ、通信手段はLINEかメッセンジャーとなり誰も(というと言い過ぎですが)メールなど使わなくなりました。

それ自体は問題ないと思います(多分、むしろいいことだとは思います)。しかし、この情報があふれたネット社会で、人々は、かつてよりももっと、いわゆる「流行」や「風」的なものに支配され、自分の頭でものを考えなくなっているのではないかと感じずにいられません。
そのような世の中で、何がフェアかということをまず自分できちんと考えてみる、という作業をするために、つまりは自分自身が自分で物事を考えるために、このブログを活用したいと思っています。
フェア、あるいは正義の概念はそれぞれによって異なるとは思うので、自分が思っていることが絶対では勿論ありません。しかし、人それぞれ考えが異なったとしても、そもそも、何がフェアか、何が正義かを意識して考える作業自体は必要だと思います。これまで、自分自身、何がフェアかをきちんと考えて行動するということをやってきていませんでした。改めてこれまでの自分を振り返り、そしてこれからの社会と自分の関わりを考えて、世の中がフェアであるように、自分の考えたことを発信していこうと思っています。

対象テーマは、政治・経済・法律・・・といった固い分野に限らず、読書感想文(本の評価を行う程の能力はないため、「書評」とは書けません)、映画などのエンタメ、レジャーなどなどで、感じたこと、考えたことを記したいと思います。
自分自身がかつて記していた別のブログの内容も、相応しいものがあれば(日付はそのままで)順次転載していきたいと思っています。

 

ALISのICO

はじめに

前回の記事を書いて以降、政局が大きく動いています。安倍さんが衆議院の解散を目論んでいるという報道がなされ(そして実際に解散された)、さらに小池百合子東京都知事が新党(希望の党)の代表に就任し、さらには前原誠司民進党代表が、希望の党への合流を宣言し、またさらには合流できない枝野幸男氏などのリベラル系の民進党議員が新党(立憲民主党)を設立するなど、日本の政治は相変わらず「政局」優先でなかなか成熟しません。
そのような状況ですが、世の中の動きに筆がついていっておらず、今回は前回記述したICOについての自分の考えを続けます。

 

前回記したように、ICOには現状で二つの問題点があり、二つ目の問題点については前回、現時点における自分の考えを述べましたが、今回検討したいのは、一つ目の問題点、「ビジネスを見込んで資金を与えても、対価として得られる独自の仮想通貨の価値が上昇しないと損失を被るが、これは投資した側が引き受けるリスクとして正当なものなのか」という点です。

 

ICOで得られる対価の経済的価値~IPOの場合と比較して
IPO(Initial Public Offering=新規株式公開)の場合は、投資家は資金拠出の対価として、対象会社の株式を取得します。現在の株式会社制度においては、対象会社の事業が成功し収益を得ることができれば、株主はそこから配当を得られます(必ず配当がなされるわけではありませんが)。このような収益を期待できる株式であれば、それは財産的価値があるということになりますし、自分がその株式を購入したときに比べ当該会社の事業が成長し(その株式から)大きな配当を得ることができるようになっていれば、株式の資産としての価値が上がりますので、購入時よりも高い価格で売却することができます。この経済的な仕組みが現在の株式市場を支えていることになります。そして投資家としては、対象会社の事業の成長性を判断すればよい、そこだけが自己責任だという信頼感を持つことができます。健全な投資市場のためには、この市場への信頼感は欠かせないと思います。

翻ってICOです。ICOにおいて対象会社が発行する独自の仮想通貨は、少なくともその時点ではよそで金銭に替わるものとして利用できるものではなく、またどこで使えるものではありません(中には、当該会社が提供するサービスを購入するために使えるケースがあるとは思います)。そうするとその仮想通貨自体に経済的な価値はありません。では、対象会社の事業が成長すると、この仮想通貨が経済的価値を有するようになるのでしょうか。

 

ALISのホワイトペーパー
もうすでにICOは終わってしまい、予定調達額を達成しましたが、ALIShttps://alismedia.jp/ja/index.html)のホワイトペーパーを読んでみました。
https://medium.com/@alismedia/whitepaperの要所を3分でお伝えする-fff453986ebe

 

ALISは、要するにWebメディアのようです。ミッションとしては、「世の中からステルスマーケティングや広告まがいの記事、信頼性の低い記事をなくす」ことにあるとされています。そのために、「多くの人々がいいねと思う良質な記事を投稿した人、またそのような記事を真っ先に探し出して「いいね」をした人に対して、より多くのALISトークンを配布」する仕組みとしています。そしてALISのプラットフォームの価値があると認められるようになればALISトークンが価値を持つようになり、(取引所にALISが上場した場合には)ALISトークンが高値で取引されるようになる、としています(ALISのホワイトペーパー日本語版11~12頁)。なおALISは9月末にcoinexchangeへの上場が認められたようです。

 

ALISトークンの問題点
ここで問題は、2つあります。1つは、ALISトークン自体は全く利用価値がないにもかかわらず(このことは、ALISがホワイトペーパーの中で認めています)、なぜALISのプラットフォームが世間で評価されるようになるとALISトークンが経済的価値を持つようになるのか、という点です。
もう1つは、仮にALISトークン自体に何らかの経済的価値があった(あるいは生じた)としても、ALISトークンが無限に発行され得るものであれば、ある投資家が持っているALISトークンの価値は発行数の増大に従ってどんどん下がって行ってしまうのではないかという点です。

 

なぜALISトークンが経済的価値を持つようになるのか
1点目の問題について。
この点について、ALISのホワイトペーパーでは特に説明がなされていません。単に、ALISがそのビジネスモデルを参考にしたSTEEMにおいて実証されている、という説明だけです。しかしなぜSTEEMにおいて独自の仮想通貨が価値を持つようになったかの検証なく、「STEEMがそうなったからALISもそうなり得る」と言われても、全く説得力はありません。たとえALISトークンが仮想通貨取引所での上場を認められても、高値で取引をされるためには、取引所におけるALISトークンの需要が大幅に増加する必要があります。
では、ALISトークンの需要が大幅に増加する要素は何か。ALISトークンを多数持っていれば、ALISにおいてどのようなメリットがあるのでしょうか?
この点、メリットの一つとしては、ALISトークンを多数持っていれば、ALISへの記事の投稿あるいは記事の評価によって報酬を受け取る際に、投稿者・評価者のベースポイントが増え、報酬が増える、というメリットが考えられます。しかし、いくつかのネットでもすでに分析されていますが、ALISトークンを多数持つことによる「報酬増加」メリットは、インセンティブとしてあまり機能しているように思えません。受け取れる報酬が決まる過程において、自身のALISトーク保有量が影響を与える度合いがかなり低いからです。
次のメリットとしては、ALISトークンを多数持っていれば、ALISの運営方法について何か決定する事項が生じたときの発言力が増すという点です。この点、ALISのホワイトペーパーにおいても、「・・・ALISトークンの所有量に応じた投票を実施し、コミュニティの総意(51%以上の同意)を持ってパラメータを変更する運営方法を取ることを将来的には検討している」とあります。しかし、そのような発言力を目当てにALISトークンを購入する投資家が殺到するとも思えません。そのためには膨大な資金力が必要となると思われるからです。
事業の成長とALISトークンの価値上昇との間の因果関係が説明できないとすると(あるいは関係ないとすると)、仮にALISトークンの価値が将来何らかの事情で上昇したとしても、それは事業の成長とは関係のないところで(もっと極端に言えば、あるいは飛躍して言えば、全くの偶然の要素で)価値が上がったということになります。そうすると、ALISに資金を拠出する投資家としては、ホワイトペーパーを見てビジネスモデルを評価するなんてことは必要なくなります。要は、ALISトークンという新規の仮想通貨を購入すれば、将来何らかの事情で(ビットコインイーサリアムと同様)価値を有するようになり、仮想通貨取引所でビットコインイーサリアムと高値で交換できるようになるかもしれないという、まさに「投機」として資金拠出を行うということになります。

 

ALISトークンに生じる希釈化の問題点について
さらに2つ目の問題点について。
ALISのホワイトペーパーを見る限り、新規発行の際のインフレ率は(ALIS Wallet内のトークン総量に対して)50%とされているけれどもALISトークンの発行総量自体に限度はないようです。
そうすると問題は、各投資家が保有しているトークンに、いわゆるdilution(希釈化)が生じるということです。
いうまでもなく、市場で流通している商品あるいは通貨については、需要と供給の関係によって価値が増減します。日銀の大幅緩和策によって通貨供給量が増え、インフレになったり円安になったりするのも同じ原理です。
そうすると、仮にALISトークンが将来何らかの経済的価値を有するようになったとしても、その後とめどなく新たなトークンが発行され、トークンの発行量増加に伴う希釈化を上回る価値上昇要因が提供されない限り、トークンの価値は下がるはずです。ALISのホワイトペーパーを見ても、このような事象への対策の説明はありません。

 

終わりに
 以上、ALISのホワイトペーパーを検討してみて感じた問題点を記述しました。その結果、私としては、このプロジェクトに資金拠出することはない、というのが結論です(すでに資金拠出の期間は終わってしまいましたが)。

 

ICO(Initial Coin Offering)のリスク。IPOとの違い。法的規制は必要か

9月4日、中国の中央銀行である中国人民銀行が、独自の仮想通貨を発行して不特定多数の投資家から資金を集める、いわゆるICOを禁止すると発表したそうです。日経新聞によれば、これよりビットコインなどの仮想通貨全体の時価総額が1日で約2兆円下落したとのこと(その結果約16兆円になったとのことなので、約11%の下落幅ということになります)。

ICOは、新規株式公開(Initial Public Offering=IPO)をもじったネーミング。IPOが、一般に新興企業が上場に際して新たに不特定多数の投資家に株式を発行して資金調達を行う(株式発行の対価として発行企業が得るのは文字通り金銭)のに対し、ICOの場合は、発行企業は株式を発行する訳でもなく、単に発行者が独自の仮想通貨を発行するに過ぎません。そして投資家側は、ビットコインなどある程度流通している仮想通貨を発行者側に払い込みます。

要は、発行体たるベンチャー企業が行おうとするビジネスを見込んで投資を行うということです。但しその結果得られる対価は、新規の仮想通貨ですから、その仮想通貨はその先海のものとなるかもしれませんし、山のものとなるかもしれません。うまく行った場合は何倍何十倍ものリターンを得られることもあるでしょうが、投資した対価として発行体の経営に(株主等の議決権を持つ形で)関与できるわけでも、株主のように事業がうまくいった場合に将来配当という形でリターンを得られるわけでもなく、リターンを得られるかどうかは単に受け取った仮想通貨がその後値上がりするかどうかの1点にかかっている訳です。

https://www.houdoukyoku.jp/posts/14647

また、ICOで、3時間で1.5億ドルを集めた事例もある一方で、ある調査によると、主要なICO48件のうち、表明したはずの製品やサービスが存在しない案件が全体の56%に達していたということです。

つまり、現状では、2点の問題点があるように思います。①ビジネスを見込んで資金を与えても、対価として得られる独自の仮想通貨の価値が上昇しないと損失を被るが、これは投資した側が引き受けるリスクとして正当なものなのかという点、②不特定多数の投資家から資金を集めるに際して、発行体が行おうとしているビジネスについて開示すべき内容が確立されていない、また市場自体も確立されていないという点。

しかし、ネットを見ていると(あるいは新聞でさえも)そういうリスクをきちんと説明することなくICOをもてはやす風潮があるように思えますが、極めて無責任な態度ではないかと思っています。

将来的には、(上記②の問題点への対処として)有価証券の定義を改正して仮想通貨も有価証券に含め、ICOも公募の規制がかかるようになるのではないでしょうか。
そんな頭の固いことばっかり言っていたら機動的な資金調達ができなくなり柔軟な発想を阻害するということかもしれません。確かに、現状は、IPOのように煩雑な法規制がないから(監査法人も要らないし、有価証券届出書も要らないし、主幹事証券も必要ないから)、低コストで資金調達できる点がICOのメリットであるにもかかわらず、公募と同様の規制をかけてしまうとそのメリットが全くなくなってしまい意味がないということになります。でも不特定多数から金銭的価値のある資産を集めようとする以上、野放図にすることはできず、一定の規制が必要と思います。現在の仕組みがコストがかかりすぎるということであれば、別途、インターネットなどで事業の仕組み、会社の状況などを公開することによって公募で資金調達できる簡易な取引市場の制度を整えればよいのではないでしょうか?(調達額に上限を設けるなどの制限が必要とは思いますが)

私がよく分からないのは、上記①の問題点です。ICOは投資ではなく単なる投機だというような言われ方もされていますが、発行体のビジネスモデルの成否と、発行される仮想通貨の価値の増減の間に因果関係があれば、それは投資だといってよいように思えます。しかし、ICO発行体のビジネスがうまくいくと、どうして、ICOによって発行された独自の仮想通貨の価値が上がるのでしょうか?私にはその辺りがよく分かりません。
この点、試しに現在ICOを行っているALISのWeb Siteを見てみました。その検討結果は後日記したいと思います。

加計学園問題とは何か?

7月10日、加計学園問題に関する国会の閉会中審査が行われ、前川前文科省次官や萩生田官房副長官参考人として招致されました。都議選の大敗を受けた自民党がやむなく開催に応じたというところですが、このような茶番審査で真実が分かるはずもありません。

そもそも、この加計学園のスキャンダルは、一体何が問題なのか。問題の本質の議論が置き去りにされているように思います。メディアも大衆を煽るばかりでなくもっと何が問題なのかをきちんと整理して分かりやすく説明してほしいところです。

 

報道(やネット)では、この問題の論点として以下のような点が述べられて、あるいは示唆されているようです。

  • 何十年間も獣医学部の新設を認めてこなかった文科省の「岩盤規制」は妥当なのか。むしろ既得権益を擁護しているのではないか。
  • 官邸のアクションはその「岩盤規制」にドリルを開けるためのもので、むしろ促進されるべきものではないか。加計問題で騒いでいるメディアや大衆は、それまで「岩盤規制」を崩せと叫んでいたのではないか。
  • 今回の問題は安倍政権に省庁の人事権を掌握された官僚側の意趣返しに過ぎないのではないか(陸自日報データ破棄問題に関する稲田防衛相の関与についての陸自のリークと同じ構造でしょうか)。
  • 出会い系バーに行くような前川元文部次官の発言は信じられるのか。天下り問題で次官を辞めさせられ、政権に恨みを持っているのではないか。
  • 「国家戦略特区」や規制緩和を活用し、獣医学部の新設を特例で認めることで、獣医を増やすって?特区構想ってそもそも何のためにあるのか?獣医学部新設と経済活性化にどのような関係があるのか。獣医学部の新設が悪いってことはないが、他にもっとPriorityの高い規制緩和があるのでは?
  • 獣医学部の新設が認められると私学助成金が交付されることになるが、税金の使途として妥当か?
  • 獣医学部を新設する必要があるとして、今治市加計学園のほかに京都市京都産業大学も手を上げていたようだが、一つに絞ったことの是非、及び京都ではなく今治にしたことの是非?
  • それもこれまでの獣医学部の定員総数の17%にも及ぶ160人での定員での学部新設が必要なのか?
  • 上記の問題と、安倍首相が問題発覚後に、「今治市だけに限定する必要はない。地域に関係なく、2校でも3校でも、どんどん新設を認めていく」と発言したこととの整合性?

 等々の問題です。メディアでもネットでも上記各問題のそれぞれが整理もされずに種々論じられていて、問題の本質が見えにくくなっている気がします。

 

しかし、いうまでもなく、加計学園の問題では、行政の中立性・高潔さ(英語で言えば、"integrity")が保たれていたのかが、本質として問われるべき問題です。これに相対する概念が、縁故主義というのでしょうか、日本ではあまり聞きなれない言葉ですが、英語では"cronyism"というらしく、昨今の英字新聞などを見ると加計学園の問題ではしきりにその言葉が使われています。

 

勿論、獣医学部を新設する必要性が低ければ、本来は必要性の低い事項についてお友達の要望を尊重して優先的に処理した、ということになり問題の程度が大きくはなりますが、いずれにしても間接的な問題だと思います。

 

そして、①加計学園の理事長は安倍首相の「刎頚の友」である、②それまで何十年も新設されていなかった獣医学部の新設が、加計学園(が運営する岡山理科大学)に限って認められた、③その過程で京都産業大学は選から漏れた(「それまで獣医学部がなかった地域に限って認める」という要件が新たに追加された、とも報道されていますね)、④昨日報道されていましたが、2017年1月に特区諮問会議により加計学園獣医学部新設の事業者として決定される2か月前に、山本地方創生相が「四国に新設する」旨を獣医学部に伝えた、という事実関係からすれば、世間は、「お友達だから新設を認めたのではないか?」という疑問を当然持ちます。

それが総理の直接の発言でなく、周囲が忖度したとしても大きな問題ではありません。安倍政権では行政はそういった事情を忖度してやられているんだ、ということになれば、政権は支持されないでしょう。

 

もっとも、この問題の時系列などを見れば、特区による加計学園への獣医学部新設は民主党政権時代に民主党議員主導で検討されてきた事項のようであり(加計学園理事長は当時民主党江田五月氏も仲が良かったようですね)、「理事長が首相の刎頚の友だった」という事情は単なる「偶然」に過ぎなかったのかもしれません。

http://tactical-media.net/%E5%8A%A0%E8%A8%88%E5%AD%A6%E5%9C%92%E7%8D%A3%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81/

しかし、それならば政権はきちんとその旨の説明をすべきだった。説明をして疑いが貼れるかどうかは勿論また別ですが、説明もしないままに参院で「中間報告」の形で共謀罪法案を強行採決してまで国会を閉会させ、この問題が追及されないようにしたという訳ですから、さらに疑惑に拍車をかける形になってしまいました。

 

愛媛県知事の方が愛媛県への誘致の必要性を熱弁し、それを見たアイドルキャスターが早速好意的に評価していましたが、そこは問題の本質ではない。仮に獣医学部を新設する必要があって、愛媛という地方を活性化する必要があっても、それと今回の問題とは別物であり、メディアはきちんとそこを整理して報じて欲しいものです。

 

東京都議会議員選挙

 

ご承知の通り、小池さん率いる都民ファーストの会が圧勝しました。

定数127議席のうち、都民ファースト自体が49議席小池都知事を支持する勢力とあわせると過半数64を超える79議席自民党は改選前の57議席からなんと23議席にまで議席を減らし、過去最大の惨敗だったようです。

 

私が住んでいる世田谷区は定数8名の大選挙区であり、立候補者は18名。国政選挙でもよく見かけるマック赤坂なんかもいます。都民ファーストの候補者2名はワンツーフィニッシュで当選しましたが、8名も受かる訳ですから、結局自民党の候補者3名も(得票数は少なくとも)当選しました。落選したのは無所属の方々ばかりです。当選すればそれぞれ1議席として対等なわけですから、全体としては都民ファースト圧勝といっても、世田谷区ではその結果は全く反映されていない、ということになります。

 

さて今回の選挙結果は、小池さんが支持されたというよりも、国政レベルで自民党が自滅したという見方が大勢のようです。つまり、①加計学園での獣医学部設置を巡る「総理のご意向」疑惑、これに蓋をする形でなされた、②いわゆる共謀罪法案を成立させるときの参議院での強引な決議や、③選挙期間に入ってからは豊田真由子議員の秘書に対するパワハラ、④稲田防衛大臣の問題発言、⑤下村博文文科相加計学園からの違法献金疑惑、等々が重なり、それまで自民党(安倍政権)をなんとなく支持していた層も離れていったのではないか、国政における政権の支持の是非が、都議会選挙にも影響したと、とそういう見方です。

 

私はそれは違うのではないかと思っています。

 選挙の少し前の各新聞社の世論調査における安倍政権の支持率が、その前の世論調査における支持率から急落したということを見れば、大勢の見方が正しいということになりますが、上記の①~⑤に近い話はこれまでもあったわけで(森友学園を巡る安倍昭恵夫人の関与疑惑や、集団的自衛権行使を認め、また自衛隊による他国軍の後方支援を認める内容の安保関連法案改正や、特定秘密保護法案の成立等々)、ここに来て①~⑤が原因で支持率が急落して選挙で大敗したというのはちょっと短絡的すぎるのではないかと。

 

急速に日本を右傾化させている安倍政権に懸念を感じている国民はおそらく報道以上に多いのではないかと私は思うのですが(まあ、私がそういうタイプなので、相当贔屓目が入っていることは否めませんが)、これまではその人たちの受け皿がなかった。

つまり、安倍政権に対して懸念は感じていても、かといって旧民主党に投票するまでには踏み切れなかった国民が多かったのではないかと見ています。少なくとも経済政策を見れば、安倍政権では財政政策を犠牲にし、また成長戦略はいつもやっているふりだけで構造改革など全く進んでいない(やる気がない)ながらも、黒田バズーカと呼ばれる日銀の大規模金融緩和を原因として、株価や為替といった見た目の経済指標は民主党政権より大幅に改善した訳です。経済政策だけではないと思います。米中韓ロとの外交面やその他、旧民主党政権と比べて安倍首相の実行力自体は評価してきた国民はそれなりに多いのではないかと思います。

 

しかし今回、都政のレベルにおいては、小池百合子さんという(この方も保守ですが)それなりの執政経験のある政治家が率いる政治団体が登場した。国政レベルではともかく、都政レベルでは、この団体に任せてみていいのではないかということで都民ファーストが現在の自民党に懸念を持つ人たちの受け皿足り得た、私はそのように見ています。

したがって、仮に近い将来国政選挙があったとして、かつ都民ファーストが国民ファーストとして国政にも進出したとして、今回の都議会選挙の結果がそのまま反映されるかというとそこまではないのではないかと。そのように思っています。

自民党惨敗の陰に隠れていますが、民進党はもっと惨敗している訳ですしね。5議席って、共産党ですら19議席も獲得している訳ですから。

 

まだまだ国政は、安倍1強が続くと思います。